【コラム】InDesignで作るADPSとEPUBのジレンマー第3回「プレゼンツールとしての電子書籍作成」
●プレゼン型電子コンテンツ
現在タブレット端末上で利用される電子コンテンツには、EPUBのように読み物を中心とした電子書籍をターゲットにしたコンテンツやツールの開発が多く行われています。
それに対してAdobe Digital Publishing Suiteのように今までにないインタラクティブ性を持たせたビジュアル体験を含んだ電子コンテンツ制作ツールもあります。セミナーなどで紹介するときには分かりやすいよう、このタイプの電子書籍を総称して「プレゼン型電子コンテンツ」と呼んでいます。
これらの電子コンテンツは自分が見て楽しむものでもありますが、自分以外の人に見せるための「プレゼンテーション」としての役割が強いと考えられます。
ADPSを使って作られたアプリには、書籍や雑誌などの読み物を対象としたコンテンツが多くありますが、教育向けの言語学習ツールや美術館など、視覚的に訴えるプレゼン的な性格を持ったコンテンツが多く存在します。
InDesignで作成されたFolioコンテンツ実際に専用ビューワーで閲覧してみると画面上でタップによる画像や文字の切り替え表示、動画、音声の仕掛けなどインタラクティブな仕掛けを使えます。これは、インターネットが普及する以前、Macromind Director(のちのMacromediaからAdobeへ移管)で作られたマルチメディアCD-ROMコンテンツと似ているのが分かります。
ボタンによるインタラクティブ性とページ概念の元をたどれば、かつてマッキントッシュにバンドルされていたHyperCardまでさかのぼることができるでしょう。CD-ROMコンテンツではクリックで画面が転換するだけでしたが、iPadのように直接スクリーン上を指を滑らせるインターフェイス上にページの概念を持たせ、さらに表示端末の縦向き、横向き表示に対応させたものが、現在のビジュアル中心の電子メディアの正体です。
●Folioをプレゼンツールとして使う
つまりFolio Producer toolsはiPadを使った「プレゼンコンテンツ作成ツール」としても使うことができるわけです。ただし残念なのは、CD-ROM時代からあまり進化していないインターフェイスデザインと操作性です。それはページとサムネールビュー間の移動が分かりづらく操作しにくい点にあります。
下の画面はFolioのページビューを見た場合と、Folio全体をサムネールビューで表示した場合の画面ですが、ページビューとサムネールは分断されていて、見たいページにダイレクトにジャンプできません。サムネールでのページめくり位置も以前見た位置が記憶されており、リセットはされません。一度表示したページ位置が保持されているので、そこからページをめくっていかないとたどり着けないのです。また、Folioが横方向に記事、縦方向にページを並べている構造も複雑にしている原因の要素です。
同様の電子書籍ツールとして注目を浴びている「Push Pop Press」があります。最近Facebookに買収されたPush Pop Pressですが、このツールを使って制作された電子書籍アプリとしてアル・ゴアの「Our Choise」があります。このコンテンツでは上部にカバーページがあり、その下にサムネールビューがあります。サムネールのページやページ上の写真やムービー、グラフィックをタップしたり、ピンチイン/ピンチズームすることで、ストレスなくいつでも好きなページを拡大して見ることができます。またページは横方向にのみ連続しているので、構造が分かりやすくなっています。
Push Pop PressのOur Choiceについはこちらから購入できます。紹介ムービーなども確認可能です。
http://pushpoppress.com/ourchoice/
「プレゼンテーションのし易さ」は「コンテンツとしての閲覧のしやすさ」とイコールと考えられます。Push Pop Press社は今後、このインタラクティブ性を持った電子書籍制作ツールをリリースする予定ではあります。ですが、実際にどのようなツールになるのかはまだ不透明です。
Facebook社ではなく、Adobe社がPush Pop Pressを買収して、インターフェイスを採り入れて欲しかったところですが、今後はほかにもアップルのiLife, iWorkのように手軽に簡単にコンテンツを作成できるツールが登場してくるかもしれません。そうなると、まだ未知の領域である電子コンテンツ制作アプリの勢力図が変わる可能性は十分にあります。
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