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【コラム】InDesignで作るADPSとEPUBのジレンマー第2回「Folioとはなにか」

Columntitle●電子書籍Folioの位置付け

連載2回目は、ADPSで使われるFolioとはどういうものなのかについて。
まず、Folioの位置付けについてです。

一般的に「電子書籍」と言われるメディアには大きく分けて2つのタイプに分類できます。1つは、既存の紙メディア向けに制作したレイアウトをそのままページごとに画像やPDFとして書き出したものを閲覧する「ページ固定型」の電子書籍形式です。
もうひとつはEPUBに代表されるテキストや画像をデータとして保持し、そのまま端末に合わせて表示が変わる「フロー型」のフォーマットです。

「ページ固定型」は画像なので「自炊」と呼ばれる、購入した書籍や雑誌などを裁断、スキャンした上でPDFなどのファイルにまとめる作業にも似ています。自炊が一度アナログになってものを再度デジタル化するのに対し、メディアを持つ出版社側でデジタルデータのまま画像に変換されているのでより綺麗に閲覧できます。
しかし画像で保持される分データサイズは巨大になってしまいます。

Folioは、インタラクティブコンテンツを挿入可能で、縦横向きに合わせてページの向きが変わりますが、データのフォーマットとしては前者の「ページ固定型」にあたります。
そしてダウンロード販売されるFolioデータサイズも巨大になってしまいます。ムービーなども含むと、ひとつの雑誌だけで500MBを超えるものもあり、数本ダウンロードしただけで、iPadのストレージがいっぱいになってしまいます。

●InDesignを使うデザイナーにとってのFolioの魅力とは

ではFolioの魅力とは何でしょう。

「ページ固定型」を「電子書籍」と呼ぶに値するかどうかの議論は置いておいて、デザイナーとしてInDesign上でレイアウトを作っていて楽しいのはEPUBよりも断然Folioです。

レイアウトされたページは見えるまま画像として保存されるので、考慮しなければならないのは、縦向きと横向きでiPadの画面サイズに合わせた小さい画面で見えるかどうかだけです。これは、紙メディア向けのデザインを作る感覚に近く、レイアウトの自由度が高いのが魅力です。

Folioを作る上ではInDesignで作成する機能上の制約も特になく、最終的な出力物はビットマップ画像またはPDFですから、もちろん縦書きも可能ですし、細やかなレイアウト表現やフォントも使い放題です。

今のところiPadの1024×768ピクセルを対象としているので解像度が低くなってしまうのが現状です。いまの解像度ではピクセルが見えてしまい、文字もボケてしまいます。Folioを作成する上でで考慮すべきなのは、解読可能な文字のサイズと、インタラクティブコンテンツの仕込み方、必要なナビゲーションの追加程度でしょう。

しかし、今後iPadの後継機が販売される際に、iPhone 4と同じように、液晶の解像度が向上し、300ppi以上の表示能力を持つとどうでしょう。Folioが対応すればより美麗な電子出版物ができあがります。

(噂ではiPad3は2560×1920を解像度になるという話もあります。これはiMacの27インチモデルの解像度を超えており、300ppi換算で印刷した際にはA5サイズを超えます。もちろんデータサイズも比例して大きくなりますが。)

●Folioはだれのためのものか
Folioのレイアウトが自由なのは、iPadやAndroidといったタブレット端末にプラットフォームを限定しているからこそ出来ることで、オープンなEPUBのように多用なメディアで表示させることを考えなくとも良いからです。

いわば、紙からiPadやAndroidに置き換わったのと同じだけともいえます。これは、iBooksのみ利用できるiBooks拡張設定を行ったレイアウト固定のEPUBにも言えます。

ただし、制作環境も再生環境もアプリケーションに依存しなければならず、「InDesignからFolio + ADPS」の宿命は「FlashからSWF + FlashPlayer/Adobe AIR」と同じ道を辿っているようにも感じられます。

InDesignというパブリッシングツールを購入し、ADPSを契約しなければ成立しないソリューションであり、それが今後何年続くのか、存続するのかもすべてメーカー次第なのです。

Folioと同じようにページめくりができて、インタラクティブコンテンツが入ったiOSアプリを作ろうと思えば、Flashに腕の覚えがある人であれば、Flashコンテンツを作成してAdobe AIRにしたりフレームワークを利用してiOSやAndroid用のアプリも作れるでしょう。

Folioは簡単にいえば、FlashやC言語を使ってiOSアプリ開発する知識や予算はないがコンテンツは持ってる。印刷用に作ったレイアウトはある。InDesignのスキルもある。といった人向けのソリューションなのです。

作成したFolioを流通させるにはADPSの契約が必要ですが、社内での閲覧や少ないスタッフや仲間内で共有し閲覧するような使い方であれば、無料のAdobe IDがあれば可能です。例えば営業用に製品マニュアルを電子化し、iPadを持ち歩いて興味がある顧客へプレゼンするといった使い方もできるでしょう。

InDesign CS5があれば、Folio用のツールは無償提供されています。使い方次第で面白いメディアを作り出せる可能性を秘めている電子メディアと言えるでしょう。

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コメント

自分が考えていたことがコラムになっていて驚きです

まず解像度について
現在のiPadの解像度はたしかに高いものではないですよね
実際Folioを作成して思ったのは
紙のために作ったデータをそのまま組み替えるのは難しいなと思いました
一番の問題は文字の大きさです
紙の本だと本文級数はだいたい12,3級といったところだと思いますが
その級数でiPadで表示させると注釈なみに小さくなってしまいます
個人的には20級ぐらいが調度良いと感じました
(自分のブログにその辺りを書いてあるので、もしよければ覗いてください)
級数を変えることで文章の占める割合が増え
紙1ページをiPad1ページで表現するのは難しいなと感じました
そうなるとiPad用にコンテンツの再構築をしなければいけなくなり
編集部の負担増になりますね
まぁ、そもそも紙のをそのまま使おうという考えが甘いのかもしれませんが
そうなると「だったらPDFでいいじゃないか」という声も聞こえてきます
ちなみに、前のコメントでご紹介したWoodWingの方が
ePubみたいに指定範囲内で文字の拡大縮小ができます

次にFolioファイルの共有ですが
これ、私も感じてました。
社内・店内とか身内で使う分にはタダでできるというのは魅力ですよね
ただAdobe側にFolioファイル管理を握られていると
いつサービスが終了(変更)になって使えなくなるかもわからないのは不安があります
β版の時のようにFolioを自前管理でiTunes経由で入れられるようになってほしいものです

本日、「ADPS & EPUBがやってくる InDesignで作る電子書籍」発売ですね
おめでとうございます
この後、購入します!

投稿: ぷらっちっく | 2011年7月 4日 (月) 11時31分

コメントありがとうございます。
そしてお買い上げありがとうございます!

ブログで紹介されていた文字サイズの比較拝見していました。

アドビ側では売りになる良いところしか言いませんから、そのまま聞いて作ってみるとダメということが多々あります。
まだ実験的な要素が強く、普及している問題点やノウハウも少ない状況ですから、今後は、文字サイズの検証や、ファイルサイズの問題、カラーの再現性など
実際に使う側であるクリエイター側から見たクオリティの検証と評価が必要と思います。

AdobeのUSサイトにはDigital Publishingについてのフォーラムがあるのですが、
ここではiTunesを使ってデータを転送するサイドローディング機能を戻せという意見が多くあって荒れているみたいです。
こういう突然の仕様変更やソフトの開発停止が、いつもユーザーを路頭に惑わすのは今にはじまったことではありませんが。

今後機会があればADPS以外のInDesignソリューションについても調べてみたいと思っています。

投稿: 樋口泰行 | 2011年7月 4日 (月) 15時00分

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